バランBalun <その1> 9:1ununの作成
『バランBalun<その1>9:1ununの作成』(この記事)
『バランBalun<その2>4:1ununの作成』(記事はここ)
『バランBalun<その3>4:1平衡バランの作成』(記事はここ)も掲載しました。よろしければご連ください。
▼トランシーバー内臓チューナーを有効利用するために
普段は2階ベランダにATUオートアンテナチューナー(icom AH730)を設置して運用していますが、トランシーバー内臓チューナーを使って1本のロングワイヤーアンテナで多くのバンドQRVできないかと「ununバラン」の作成をしました。
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9:1unun 試作No.6のバラン |
数か月にわたって試作を繰り返し、その経験から、巻き数や巻き方、配線など、バラン作成にはちょっとしたコツがあると感じました。
【ununバランの作成のコツ】
▶配線を最短にする
・巻き方はW1JRよりバイファイラのほうが数㎝短くできる
・特に入力側の同軸コネクターとコア間は最短にする
▶線は平衡/密着
・平衡のほうが、より線状にするより数cm短くできる
・平衡のほうが、各々の線がコアに平均して密着する
・2本または3本の組合せる巻き線どうしは平衡にして密着させる
▶巻き数は6~7ターンが全バンドでバランスが良い
8~12ターンも試したが、巻き数が多いとハイバンドでSWRが高くなる。
【9:1ununバランの作成 No.1~No.6】
▼使用材料
・フェライトコア: FAIR RITE 5943003801(FT240#43相当)
・耐熱ビニル線: AWG18耐熱ビニル線、AWG20耐熱ビニル線
・同軸コネクター
・ケースは100均で購入
▼測定
アンテナアナライザー⇒9:1unun⇒450Ωダミーロード
回路図
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9:1unun 回路図 |
< No.1 >
・巻き方: AWG18耐熱ビニル線3本をより線状にする。コア1個にバイファイラ巻3ターン、コア2個を直列=計6ターンにしてケースに重ねて収納。
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No.1 9:1unun より線状,バイファイラ,コア2直列 |
・測定(450ΩダミーロードにてSWRを測定)
1.8~14MHz=1.0、18MHz=1.1、21~28MHz=1.2~1.7、50MHz=3.0以上
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー9.1m長)
1.8~21MHzと28MHzはマッチングが取れる。
24MHzは出力80W、50MHzは出力20Wあたりまで上げるとマッチングが外れSWRは無限になる。
< No.2 >
巻き方: W1JR巻、他はNo.1と同様
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No.2 9:1unun より線状,W1JR巻,コア2直列 |
1.8~14MHz=1.0、18MHz=1.2、21~28MHz=1.5~1.7、50MHz=3.0
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー9.1m長)
1.8~28MHzはトランシーバー内臓チューナーでマッチングが取れる。
50MHzはマッチングが取れない。
< No.3 >
・巻き方: No.1と同様の巻き方で、ケース収納を2連続直列(重ねない)で収納
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No.3 9:1unun より線状,バイファイラ巻,コア2連続直列 |
・ 測定(450ΩダミーロードにてSWRを測定)
1.8MHz=1.1、3.5~18MHz=1.0、21~28MHz=1.2~1.4、50MHz=3.0
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー9.1m長)
1.8~50MHz全バンドにおいてトランシーバー内臓チューナーでマッチングが取れる。
< No.4 >
・巻き方: やや細いAWG20耐熱ビニル線3本を平衡密着(より線にしない)にして、コア1個にバイファイラ巻6ターン。
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No.4 9:1unun AWG20,平衡密着,バイファイラ巻,コア1個 |
・測定(450ΩダミーロードにてSWRを測定)
1.8MHz~24Hz=1.0、28MHz=1.2、50MHz=2.4
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー7.7m長)
7MHzと14~28MHzにおいてトランシーバー内臓チューナーでマッチングが取れる。
No.1~3よりエレメントが短いためか、1.8MHz、3.5MHz、10MHzの3バンドはマッチングが取れない。
50MHzは出力30Wあたりまで上げるとマッチングが外れSWRが無限になる。
< No.5 >
・巻き方:太いAWG18耐熱ビニル線を使用。他は<No.4>と同様
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No.5 9:1unun AWG18,平衡密着,バイファイラ巻,コア1個 |
・測定(450ΩダミーロードにてSWRを測定)
1.8MHz~18Hz=1.0、21~28MHz=1.1~1.25、50MHz=3.0
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー7.7m長)
<No.4>と同じ結果となり、7MHzと14~28MHzはトランシーバー内臓チューナーでマッチングが取れる。
1.8MHz、3.5MHz、10MHzの3バンドはマッチングが取れない。
50MHzは細い耐熱線に比べてやや改善したが、出力50Wでマッチングが外れる。
< No.6 >
・巻き方: AGW18耐熱ビニル線3本を平衡密着にして、No.1同様にコア1個にバイファイラ巻3ターン、コア2個を直列=計6ターンにしてケースに重ねて収納。
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No.6 9:1unun 平衡密着,バイファイラ巻,コア2直列 |
・測定(450ΩダミーロードにてSWRを測定)
1.8MHz=1.1、3.5~18MHz=1.0、21~28MHz=1.1~1.25、50MHz=3.0
・テスト運用(トランシーバー内臓チューナー⇒8D-FB⇒ロングワイヤー7.7m長)
1.8MHz、7MHz、14~28MHzにおいてトランシーバー内臓チューナーでマッチングが取れる。
3.5MHz、10MHzは出力40Wあたりまで上げるとマッチングが外れる。
50MHzはマッチングはとれるがSWRは1.5になる。
▼テスト運用にてマッチングが外れる原因は?
1)ローパワーではチューニングが取れていたのに、出力を上げるとチューニングが外れるのは回り込みが考えられます。
2)回り込み対策の一方法として給電用同軸ケーブルにコモンモードフィルターを取付けると、チューニングできなくなるバンドが出現する
⇒同軸ケーブルに電波が乗りアンテナの一部として働いているようです。
▼いい感じの9:1ununバランは?
実運用では多くの要因が複雑に絡み合うので、どのバランが良いかを判断するのは難しいが、SWR測定で満足できたNo.4/No.5/No.6がエレメント長次第ではいい結果が出ると思います。
そこで
▼No.6のバランで運用してみました
7MHz~28MHz、エレメント長7.7m、FT8(出力20W)、CW(出力100W)で運用
国内QSOには充分です。
DXはアジア、USA、南米の局とQSOできました。
▼9:1ununバランの作成はこれで終了して、4:1ununバランの作成に取り掛かりました。
バラン<その2>に記載の4:1ununバランは、組合せる巻き線が2本なので作成が容易で扱いやすく、結果もさほど大差ありませんでしたのでお勧めです。
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