ATU 屋外オートアンテナチューナー の飛びを良くする アース と エレメント長
2011年に再開局するにあたり、一番の問題はアンテナをどうするかでした。
過去には『昔作った 良く飛んだアンテナ』の記事(ここ)で紹介したようなアンテナを使っていましたが、今回は諸事情から、出来るだけ簡易なアンテナにすることにしました。
とは言っても『飛びは良くしたい!!』その試行錯誤の忘備録です。
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現在(2025年)のアンテナ |
まずは
【1】これまでに使用したATU
これまでにicomのAH-2、AH-3、AH-4、SGCのSG-230などを使用しました。
現在はAH-730を2台を2階ベランダに設置しています。
次の表はicomの3機種の仕様比較です。
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icom AH-730/AH-4/AH-3 仕様比較表 |
AH-3やAH-4はもう手元にはありませんが写真が残っていました。
チューニングスピードはAH-3はモッサリしていましたが、AH-4、AH-730はすばやくチューニングできます。
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AH-3はケースが長く厚みもあり、部品数が多い |
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AH-4は小型軽量化された |
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AH-730は接続ソケットが外に出た |
電波の飛びは機種によって差はないように思います。
しかし、体験上、ATUの肝はアース!! アースが電波の飛びに大きくかかわると実感しています。
ATU説明書には『アース』『回り込み』の注意点として次の記載があります(icom AH-730説明書抜粋)
◎ 本製品のアースは、必ずGND端子から接地してください。
本製品のマストクランプは、GND端子とは接続されていませんので、アース端子として使 用しないでください。
◎ 無線機本体と本製品(アンテナを含む)をできるだけはなして設置してください。
◎ コントロールケーブルや同軸ケーブルの余った束を、無線機本体、または本製品のすぐ近くに置かないでください。
◎ マイクロホン、およびマイクコードをコントロールケーブルや同軸ケーブルに近づけないでください。
■ 接地(アース)のご注意
本製品のアースが不完全な場合、回り込み、チューニングが取れない、または取ったあとにSWRが悪くなる、無線機本体が故障するなどの現象が発生することがあります。
◎ 接地のしかた
大地へのアース(アース棒による接地)、またはカウンターポイズなどがあります。
◎ カウンターポイズとは
アースの代用として、張る保安線(ラジアル)のことです。
ラジアルはワイヤーアンテナと同様に、7m以上を大地にはうように張ってください。
【2】アース “カウンターポイズ” が飛びを良くする
2階のベランダ設置ですと、まともなアースは取れないのでカウンターポイズにしています。
1本15~25m長の線をきれいに張ることは出来ないので、敷地周辺の塀に沿い、大地にはうように引き回しています。
1本ではSWRが不安定だったので、AC線やアンテナ線の残骸をつなぎ20~30mの長さにして2本、3本と増設し、6本目あたりでようやくSWRが安定しました。
受信は大差ありませんが、応答率が上がり電波の飛びが良くなったと実感しています。
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2階ベランダ設置のATUに複数のアース線を接続 |
【3】ATUのエレメントの長さ
全バンドでSWRを1.5以下にするためにエレメントの長さを試行しました。
icom ATUの説明書には『 周波数の1/2波長、およびその整数倍のアンテナエレメントに対しては、マッチングは取れないのでご注意ください』とあります。
そこで1.8~50MHz全バンドにおいて1/2λの整数倍にならない長さを求めてみました。
▼エレメント長の計算
次の表1は、1.8~50MHzのFT8運用周波数における1/4λ、1/2λ、3/4λ、1λ、3/2λ、2λのエレメント長(m)<短縮率0.95>です。なお、灰色のマスキング部分は現実的ではないので無視です。
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表1 エレメント長 短縮率0.95 |
表2は、かぶらない範囲が0.5m以上ある長さを表1から割り出し、その中央値のエレメント長(m)です。
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表2 1/2λの整数倍にならないセンター値 |
6.24m、7.32m、9.33m、10.74m、12.67m、13.79m、14.63m、16.46m、18.55mなど良さそうな長さが見えてきました。
web上の各局情報ではATU利用時は6.3m、12.8m、13.8mの長さが良いとの結果と近似値です。
エレメント長の参考になるデータとして、BALUN DESIGNS社の9:1ununを使ったSWR表があります。
<Recommended Wire lengths and installtion
for Unun models>で検索すればPDFが見つかります。
この表によると7MHz以上であれば24.5feet(約7.5m)、29.5feet(約9.0m)、1.8~50MHzの全バンドでは49feet(約14.9m)、53feet(16.16m)が良いSWRを示すとあります。
以上の結果をもとに、手持ち材料と設置環境の都合もあり、次のようなエレメント長のアンテナを使用しています。
【4】ロングワイヤー<1>
昔に使っていた28MHz用ノンラジアルグランドプレーン『Cushcrafut
AR-10』のアルミパイプを使用して垂直型ロングワイヤーとしました。
アルミパイプは最大に伸ばすと5.4mの長さになり、2階ベランダに支柱2.2mを建て、その上にエレメントを設置しました。
ATUまでの給電線2.3mを加え全長は7.7mです。
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給電線を含め全長7.7m |
1.8MHz=1.2 但し100Wで連続送信は少しずつSWRが上昇します。発熱が原因で同調点がずれるのかなと思っています。短すぎるので出力50Wで国内QSOがギリギリできる性能です。
3.5MHz=1.4 SWR値は安定し、出力20Wもあれば国内QSOが可能です。
7MHz=1.0 CWやFT8なら国内は出力5~15Wもあれば十分にQSOできます。DXはFT8なら出力25~50WでQSOできます。
10MHz以上=1.0 FT8なら25W出力でDXが十分に楽しめます。
★余談ですが、この28MHz用のAR-10はとてもよく飛びます。ラジアルも無く、軽量で設置が簡単です。
AR-10のほかにCushcrafut 製の50MHz用AR-6、V/U用AR-270などがあります。
一度は使ってみたいアンテナです。
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Cushcrafut AR-10説明書表紙 |
【5】ロングワイヤー<2>
1.8/3.5MHzのローバンドを補う目的で、2階ベランダから4mほど離れたところに支柱に建て、V/Uアンテナの支柱を経由して逆L形にエレメントを張っています。
エレメント長は13.1mです。
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2階ベランダから逆L形にエレメントを張る |
当初、9.3mや19mの長さで試してみたのですが、特定のバンドでSWR値が悪かったり、長すぎて設置に困ったり、受信がロングワイヤー<1>の7.7mの方がよかったり、思ったほどの結果が出ませんでした。
13.1mで試したところ10MHzだけSWR値が1.6、28MHzと50MHzも1.5を示しあまり良くありませんでした。
そこで、雑音減少効果も期待して、先端にキャパシティーハットをつけてみました。
いろいろ試した結果、キャパシティーハットを3連にしたところ1.8~28MHzでSWR=1.0~1.2となりました。13.8mの近似値になったためかもしれません。
雑音減少効果は感じませんでしたが・・・。
50MHzはSWR=1.4と少し高くなりましたがこのアンテナでは運用しないと思うので良しとしました。
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キャパシティハット3連 |
運用状況は1.8MHzは国内QSOには十分です。
3.5MHz帯は近隣DXは何とか可能です。
7MHz~14MHzはDX交信を楽しむのには十分です。
10MHzでは北米や南米、太平洋方面が良く飛びます。
【6】ATUの回り込み対策
ATU回り込み対策としてコモンフィルターを挿入しています。
詳細記事を掲載しました(記事はここ)。よろしければ訪問してください。
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